シノワローザ空間

お庭仕事や薔薇、植物、好きな事など

怪談実話・知らせ

※  実話怖さレベル★★☆☆☆

最高を★5つで表しています。

 

ちょっと長めですがお話の性質上、区切っておりません。お時間のある時にどうぞ~(^-^)

 

 

これは30代女性Mさんとその友人女性Yさんが体験したお話です。

 

Mさんは当時ご主人とふたりで、夫婦・ファミリー向けの、ごく一般的な2階建てアパートに住んでいました。

そこはひとつの敷地に、同じ構造の2階建て棟が3つ並び、上下には部屋が4つずつあり、建物の向きも最適な南向きでした。

Mさんは、勤めていた仕事の激務のため体調を崩し、心療内科に通い抗うつ薬を処方してもらっていましたが、やはり仕事の量は減るどころか増える一方だったため、ご主人とも相談し思いきって退職、少し休養をとることにしたそうです。

 

ある日、友だちのYさんはMさんのその後が気になり、連絡をしてみました。

すると昼間は横になり、うつらうつらと半眠りをしていることが多く、ご主人が夜には帰宅するので、夕方から簡単な夕飯を作り、それから洗濯をするというような状態だというのでYさんは、今まで仕事も大変だったんだし、しばらくゆっくりでもいいんじゃない? と励ましました。

そして後日、久しぶりにMさんの家で一緒にお昼ご飯を食べる約束をしたので、Yさんは楽しみにしていました。

 

その日は穏やかによく晴れていて、秋の澄んだ空気が気持ちのいい日で、Mさん宅近くのスーパーで待ち合わせをしてお昼ご飯を買い、そのままMさんのアパートに向かいました。

同じ構造の建物が並んで3棟、その真ん中の棟。

案内されるまま階段を上り、4部屋並んでいる2階の真ん中、203号室がMさんの家になっています。

どうぞ入って~、といわれ、お邪魔しまーすと中に入ると、右側に5畳の小部屋があり、そこは物置きになってるの、といいます。

左側はトイレと浴室でした。

正面にはキッチンとつながった8畳間があり、ここが居室になっていて、窓が南に面しているので日差しもサンサンと入ってきて暖かです。

ちゃぶ台が置かれていて、今準備するからどうぞ座ってと促され、Yさんは座布団に座りこむと、キッチンで用意をしているMさんと、なにげない会話をしていました。

 

が。

何かおかしいんです。

 

これだけ部屋の中に日差しが入ってきているのに、なんだか暗い…?

部屋の陰になっている場所や天井も見渡しましたが、物理的に陰なっているだけのところは暗く、どうということもありません。

なのに、暗い。

とても変な、奇妙な感じがしたといいます。

それと同時になんだか落ち着かない。。。

MさんとYさんは中学生の頃からの親友で、つきあいも長く気心も知れているので、彼女の家で気兼ねなどするはずもないのですが、その時は妙に気持ちがはやり、ソワソワと気分も落ち着かず、なんだか早く帰りたいと思ってしまったと。

でもそれをここに住んでいるMさんに正直に話すわけにはいかないので、そのまま我慢して一緒にお昼ご飯を食べ始めました。

その時にMさんがいうには。

 

「…昼間はここにね、布団を敷いて寝てるんだけど、そっちから(玄関)おかっぱ頭の赤い着物を着た女の子が入ってきて、私の顔をのぞきこむのよ。で、この窓から出ていくの。他にもよくはわからないんだけど、いろいろ入ってきて私を見下ろすと窓から出ていくんだよね」

Yさんは、それはうつ病の症状かその薬による幻覚なのではないかと思い、さりげなく薬の量は? 強すぎるということはないの? と尋ねてみました。

すると、幻覚をみるほど強い薬じゃないから大丈夫だよ、という応え。

それじゃあ、もしかして玄関が鬼門とか? というと、確かに玄関は北側だけど、北東なのかなぁ? といって、Mさんが地図を出してきたので一緒に見てみました。

正確には北東というわけではありませんでしたが、北の位置にはお寺がありました。

ですが、お寺があるからといって必ずしも奇妙なことが起きるというわけでもありません。

「それとね、ここの隣り(202号室)、人が入るとすぐ出ていっちゃうのよ。実は下の部屋もずっと空き部屋なの」

立地は抜群にいいアパートなのに、おかしなこともあるもんだなとYさんは思ったそうですが。

「ねぇそれ、もしかして、なんかあったんじゃないの…?」

「だよね。私もそう思って大家さんに聞いてみたんだけど特に事件があったとかいうわけじゃないみたい」

そのような話をしているうちにもYさんは、部屋の中の暗さ、早くここを出たい、帰りたいという焦燥感が強くなってきて、とうとう、今日は子供の幼稚園のお迎えが早いから、とごまかし、早々にMさんの家を後にしてしまったそうです。

アパートの建物を出て、敷地からも出て、しばらく歩くと、やっとホッとしたといいます。

ホッとすると今度は罪悪感がわいてきました。

“久しぶりに会ったのにウソついて帰ってきちゃった…”

でも感じたことは本当のことだった…。

「…あんな変な感覚になったのは初めてだった。とにかくここにはいたくない、早く出たいって思って仕方なくて。なんか場所がよくないんじゃないのなぁってその時は思ったのよね」

Yさんは、そんなふうにおっしやっていました。

 

それから数日して。

Yさんが夜寝ていると、ふとなにかの気配で意識が戻りかけました。

半覚醒状態というのでしょうか、眠っているのに半分起きているような感覚で、その時、自分の布団の周りを男性がゆっくりと時計回りに回りながら自分を見下ろしています。

その人は3回まわるとYさんの左側に、ゆっくりと膝を下ろし正座をしました。

細身で背が高く、眼鏡をかけた、白髪混じりの初老の男の人だ、とYさんは目は開けていないのにわかったといいます。

襟のついたシャツにスラックスという、きちんとした服装で。

物静かそうな印象の男性でした。

その男性はYさんを見下ろしながらこういいました。

『もう大丈夫だから』

いったといっても口を開いて会話をしたわけではなく、伝わってきたといった方が正しいかもしれません。

すると男性とは反対側に、今度はおかっぱ頭の赤い着物の女の子が出てきて、

『彼はあなたのためにきたのよ』と。

 

そこでYさんは目が覚めました。

枕元の時計を見るとまだ0時前でした。

不思議と怖さはなく、ただ、今のことはMさんに関してのことで、彼女に伝えないといけない、ということが不思議と直感的にわかったそうです。

朝になり、YさんはMさんにこの夜あったことを伝えようかと思いましたが、うつ病で不安定になっている彼女に、はたしてこのようなことを伝えてもいいのだろうか、ますます不安にさせてしまわないだろうか? と迷ったそうです。

でも1日考えてみてやっぱり伝えた方がいい、とYさんは結局、翌日Mさんに電話をして、ちょっと変なことをいうようだけど実は一昨日の夜こんなことがあって、あなたのことをいっている、これは伝えないといけないと思って連絡をしたんだけど、と電話越しに、ためらいがちに話してみました。

すると意外にもMさんはあっさりと「それ、うちの父だと思う。そっくりだから」というのです。

Yさんの話した男性の容姿がMさんのお父さんにそっくりだと。

 

実はMさんのお父さんは、彼女が中学生の頃、職場の女性と不倫関係になり蒸発してしまったそうで、どうやらお母さんには当時多少の音信があったそうですが(離婚話でもめていた)、その後は東北に行くといったっきり、行方知れずになってしまったそうです。

「その不倫相手の女の人と暮らしているのか、どこにいるのか、元気でいるのかもわからなかったけど、うちのお父さん、たぶんもう死んでる。病気になったっていうのは風の便り的に聞いてたから」

Yさんも当時、Mさんのお父さんとお母さんが離婚するかも、という話は聞いていたので大変だなとは思っていましたが、その後のことは知らなかったのです。

「でもMちゃんのお父さんなら普通Mちゃん自身やお姉さんとか、お母さんのところに行くんじゃない?」

するとMさんは苦笑いをして、

「いや、私たちのところへは顔向けできなかったでしょ。だから伝えてくれそうなYちゃんのところにいったんじゃないかな。実はうち、近場だけど引っ越すことになってるんだ。今度のアパートは1階で、庭もついててね、だから野菜や花とか育てられるし、だんなもここよりそっちの方がいいだろうっていってくれて。だからたぶん父のいっていた『もう大丈夫だから』っていうのは、そのことじゃないかな。その着物の女の子っていうのも私のとこに来てた子じゃないかと思うんだけど、もしかしたら私には腹違いで亡くなった妹がいたのかも」

Mさんはそのようにいっていたそうです。

 

後日、YさんはMさんの新居に遊びにいってみると、今度は本当に日当たりのいい明るい部屋で、庭には苗もいくつか植えられ育っていました。

その時、Mさんの昔の、まだお父さんが家族と一緒にいた頃のアルバムを見せてもらいました。

Yさんは驚きました。

年はとっていましたが、それは確かに自分のところに出てきた眼鏡の男性でした。

 

それからはMさんのうつ病も少しずつよくなっていき、また仕事もできるようになったそうです。

『もう大丈夫だから』は『もうここからは引っ越すし、そうしたら病気もよくなる、だからもう心配しなくても大丈夫だから』そういう意味だったんだな、とYさんは後々思ったそうです。

着物の女の子の『彼はあなたのために(Mさんのために)きたのよ』は文字通り、お父さんがMさんのために、Yさんのところにやってきたという意味のメッセージだったんだろう、と。

父と娘

不倫して行方しれず、それは人の道に外れたことで家族を苦しめたとはいえ、娘を想う父親の気持ちはきっと残っていて申し訳ないことをした、という思いをお父さんは抱えていたのかもしれません。

もしかしたら、引っ越しをする方向に導いてくれたのも、亡くなったであろうお父さんだったのかも。

 

それにしても。

以前のアパートはいったいどういう所だったのでしょうか?

 

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